信頼

松下幸之助さんのこんな話があったので、
ちょっとのせてみました。

まず信頼から

松下幸之助さんが、
身内の3人だけで電気器具の製造を始めて間もないころのお話です。
 
しだいに仕事が忙しくなって、3人だけではどうしようもでなくなって、
初めて4、5人の人を雇うことになりました。ところが、
そのとき一つの問題が持ち上がりました。というのは、
当時つくっていたソケットなどの製品には、
石綿アスファルトなどを混ぜ合わせた煉物(ねりもの)を
材料に使っていましたが、
この煉物の製法を彼らに教えるべきかどうか、が問題になったのです。

この煉物の製造はまだ新しい分野で、
どの業者もその製法を秘密にしていました。
限られた身内だけに伝授して、
その人たちだけが作業するのが当たり前だったのです。
 
しかし、そのとき、幸之助さんは考えました。もし、
他の業者の工場のように製法を秘密にすれば、
その仕事を他の従業員に見せないようにしなくてはならない。
これは面倒でもあり効率も悪くなる。
何より、自分の工場で働いてくれる人たちに対し、
そんな態度で接してよいものだろうか、と。そこで、
結局、新しく雇った人たちにも製法を教えて、
その作業をやってもらうことにしたのです。
 
幸之助さんのこのやり方を見た同業者が、
「製法が外にもれてしまうかもしれず、同業者が増えてしまいかねない。
それは我々にとって損になるのではないか」と忠告してきました。
しかし、幸之助さんは、
その仕事が大切な秘密の仕事であるのをきちんと説明して頼めば、
人はそう無闇に裏切ったりするものではない、という考えでした。
 
その結果は、その製法を外にもらす人は誰もいませんでした。
それより、工場の秘密にかかわる重要な仕事を任されたことで、
みんなが気概と意欲をもって仕事に励み、
工場全体がきびきびと明るくなってきたのです。
 
幸之助さんは、その後もできるかぎり従業員を信頼し、
思い切って仕事を任せました。
そして、それらの人たちの殆どが期待以上の成果をあげてくれました。
 
幸之助さんは、そんな体験を幾度も重ねていくうちに、
人間が信頼しあう大切さを身にしみて感じるようになりました。
もし、いっしょに働いてくれる人たちに不信感をもっていたとしたら、
いろいろな面で不幸で不都合な姿が生まれたに違いありません。
 
そうしたことから、
「人間は信頼されれば、それに応えようとするもの。
信頼してだまされるなら、もって瞑すべし」、
これが幸之助さんのモットーとなっていったのです。

これが初期の松下の姿だったのですが、最近は企業として大きく
なりすぎたのか、ちょっと変わってしまったみたいです。
石油ストーブの対応の悪さで信用が減ってしまってきています。
また初心にもどっていい物を作って欲しいですね。